AI時代、コンサルタントに求められるスキルとは

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この記事で分かること

・コンサルティング業界におけるAIの現状
・コンサルタントに求められるスキル

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インタビュイー紹介

写真右:川端 泰祐(かわばた たいすけ)
ZEIN株式会社 取締役/Managing Director 1980年10月3日生まれ。
新卒でIT企業に入社後、ITベンチャー執行役員、外資コンサルティングファームディレクターを経て、ZEINに参画。趣味はキャンプ、筋トレ、子供・愛犬と遊ぶこと。

写真左根岸 剛之介(ねぎし たけのすけ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、国内のSIer企業でSAP基幹システム導入PJを経験し、その後外資系コンサルティングファームを経てZEINに参画。 流通・小売業界を中心に、SCM・物流領域の業務コンサルティングやシステム導入プロジェクトを多数経験しており、近年は電子帳簿保存法の対応やDX推進を中心としたプロジェクトに従事。 バケーションを取ってビーチリゾートでのんびり過ごすことが楽しみ。


コンサルティング業界におけるAIの現状

現在、ChatGPTによりAIが再度注目されておりますが、クライアントからどんな依頼があるのでしょうか?

川端:
やはりChatGPTが起爆剤になったこともあり、AIに関してはChatGPT関連の依頼が多いです。
ただ、依頼自体は「ChatGPTを使って、何かしら業務を効率化できないか?」といった漠然としたものがほとんどです。背景としては、活用方法自体は明確になっていないが「とりあえずChatGPTを導入してみたい」というお客様が多いからだと思います。そういった意味では、如何にChatGPTがビジネスに影響を与えているかが分かります。

その他よくある依頼の一つとしては、ChatGPTを利用するためのファーストステップとして、特定の業務の効率化に向けた、誰でも簡単にChatGPTに指示することが可能なプロンプト(※1)自動生成用のアプリケーションを構築し、精度の高い回答を得られるようしたい、といった要望です。

この要望に対してZEINでは、次のステップにはなりますが、社内ドキュメント(ナレッジ)を利活用するために、プライベートコンテンツをChatGPTに読み込ませ(※2)ニーズに合わせた資料準備や書類の要約、資料から自動でコンテンツ生成するためのアプリケーションの構築などを提案しています。

(※1)プロンプト:AIとの対話など、対話形式のシステムにおいて、ユーザーが入力する指示や質問のこと。
(※2)正確にはファインチューニングやPluginによる参照知識など

現段階でAIはどのような課題を抱えているのでしょうか。

川端:
例えば、人気のChatGPTであれば回答する情報の信憑性が担保できない点です。
ChatGPTはGPT-3.5の時点で、45TBから厳選した570GBで学習し、1750億個のパラメータで大量演算をして学習していますが、これらの学習から「生成」された回答は、その元となるデータの出展や根拠が不明である限り、鵜呑みにするのは危険です。

また、他にも情報漏洩のリスクがあります。誤って秘匿性の高い情報をオープンAIに「学習」させてしまった場合、第三者にその情報が開示されてしまう恐れがあります。そのため、無料で便利だからといって個人が業務利用するには危険性が非常に高いのが現状です。

しかし一方で、ChatGPTなどを活用したAIのサービスは次第に増えていますので、コンサルタントは今後、AIを活用する幅が広がることを見据え、AIを使いこなせるようになっておく必要があります。

コンサルタントに求められるスキルとは

今後、コンサルタントに求められることやスキルについて教えてください。

根岸:
自分の専門性を高めていくことが重要だと考えます。
AIはインプットされたデータをもとに動きますが、持ち合わせていないデータやデータ以外のものを取り込むことはできません。一方で、人間は情報化していないものを含めて、あらゆる物事を自分の中に取り込むことができます。そこに、AIとの違いが生まれ、人間だからこそ昇華させていける部分があるのです。

川端:
大きく2つあります。
1つ目は、プロジェクトの企画・計画力です。
AIは既存のデータをもとに動くため、新しいモノやサービスを生み出すことはできません。何らかの指示を受けて初めて動き出すものであるため、人間がもととなる企画や計画を立てる必要があります。簡単に身に付くスキルではありませんが、企画さえできれば実行はAIに任せることができます。AIを自分専用の「最高のアシスタント」として利用することができると良いでしょう。

2つ目は、プロジェクトを企画する際に必要となる情報を適切に判断する力です。
企画にあたって必要な情報をどこから集めるのか、その情報は信頼に足るのか判断することは重要です。また、判断力はその人が持ち合わせている情報量にも影響されます。情報とは、目的に直結するものはもちろん、一見関係なさそうなものが間接的に役に立つこともあります。この間接的な情報をどれだけ多く持っているかが、集めた情報から適切に判断する能力に繋がると考えています。

コンサルタントを目指す学生に向けて、情報量を増やし判断力を高めるためのアドバイスをお願いします。

川端:
自分の知識や学びの範囲を広げることと、貪欲に学ぶ習慣を持つことが大切です。
なぜなら、コンサルタントとしてクライアントに最適なアドバイスを提供するには、多くの異なる知識を結びつける能力や集合知が必要だからです。

インターネットが普及していない時代は、欲しい答えを探すために書籍、文献、先輩や上司のアドバイス、講演、セミナーなどさまざまな手段を活用しました。そのため、問題に対する答えを見つけるためには、今よりも多くの情報を収集し、異なる知識を結びつけ、答えを見つける・作り上げる必要がありました。その結果、自然にさまざまな分野の知識を身につけることができました。

しかし、現在の若い世代は、インターネットが日常的に利用可能になったことで、知識を簡単に入手できる環境にいます。そのため、必要な情報を迅速に入手する能力は備わっていますが、異なる知識を獲得するための長い経路をたどる経験は少ない、というのが現状です。

そこで、知識を増やすために積極的な取り組みが不可欠になると思います。
インターネットやソーシャルメディアは、個人の好みに合った情報で満たされており、自分の関心事とは異なる分野の情報に触れる機会は限られています。そのため、自分から新たな分野や情報にアクセスし、興味を広げていくことが非常に重要です。
幅広い知識を持つことは、将来AIに置き換えられない価値あるスキルを築くために不可欠ですので、興味の幅を広げ、自身を貪欲に成長させることが大切です。

根岸:
自分で考えて、自分で決めることを積み重ねてほしいです。たとえ失敗しても、なぜ失敗したのか原因を探り、トライしていくことで自然と判断力は研ぎ澄まされていきます。こうした試行錯誤の過程は、その人にしかない価値の創造にも繋がります。

<執筆/撮影:渡辺藍>
※本記事掲載の情報は、公開時点のものです。