インタビュイー紹介
根岸 剛之介(ねぎし たけのすけ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、国内のSIer企業でSAP基幹システム導入PJを経験し、その後外資系コンサルティングファームを経てZEINに参画。流通・小売業界を中心に、SCM・物流領域の業務コンサルティングやシステム導入プロジェクトを多数経験しており、近年は電子帳簿保存法の対応やDX推進を中心としたプロジェクトに従事。バケーションを取ってビーチリゾートでのんびり過ごすことが楽しみ。
ニーズが高まるコンサルティング業界の現状
コンサルティング市場は年々拡大を続けていますが、なぜコンサルティングのニーズが高まっていると思いますか?
理由は2点あると考えます。
1点目は、社会の変化に対応していくために、新たな取り組みを行う企業が増えているからです。
昨今は社会の移り変わりが早く、時代に追いつくためには、これまで以上にスピード感をもって新たな取り組みを行うことを求められます。しかし、企業内だけで対応していくためには負担が大きく、時間が掛かってしまうため、コンサルタントに依頼するケースが増えていると思いますね。
2点目は、社会全体でDXを推進しているからです。
「2025年の崖」で叫ばれているように、日本企業がDXを推進しなければ、2025年以降の5年間で、最大で年間12兆円の経済損失が生じるということが発表されています。しかし、DX推進に取り組む企業が増えつつも、未だ導入できていない企業が多く、コンサルティングを依頼する企業が増えていると感じています。
時代の流れとともに、案件の数や規模に変化はありますか?
案件の数は年々増加し、規模自体は以前より縮小していると感じています。
私の肌感覚になってしまいますが、今までの案件は全社レベルで行うものが多数でした。しかし、最近は1社の中で規模の小さい案件を複数実行し、スピーディに小さな成功体験を積み重ねていって、会社全体を巻き込んで底上げをしていくという進め方がよくみられますね。
時代の変化に追いつくために専門的な人材を雇用することも1つの方法だと思いますが、なぜ企業はコンサルタントを活用するのでしょうか?
考えられることとしては3点あります。
1点目は、コンサルタントのように流動性が高い人材を雇う方が、コストやリスクを抑えることができるからです。
以前に比べて、コンサルタント出身者や専門的な知識を持つ人が事業会社に転職するケースは多くなっていますが、複雑化する課題に対して企業内の人材だけで解決していくことは非常に難しいです。
また、新しい取り組みを行う際には、取り組みごとに必要な専門性も異なります。それらを社内の人材だけで行うよりも、必要な時に必要な人材を集める方がコストが低く、不要な人材を囲い込むリスクが小さくなると考えます。
2点目は、社外の人が持っている業界の知見を活用するためです。
企業内の人材のみが持つ専門性がある一方で、内部にいると見えない部分が出てきてしまうことも多くあります。そのため、コンサルタントが持つ幅広い業界知識を活かし、新たな視点から事業を推進していくことが可能になります。
3点目は、社内の人間関係やしがらみを考慮しなくて良いからです。
社内でプロジェクトを推進していく場合は、お互いの部署の考え方や人間関係や上下関係等、わかっているからこそ動きにくい部分というものがあります。そのため、コンサルタントに委託し、第三者が進めていく方が、物事を円滑に進めることができる場合があります。
根岸さんがコンサルタントとして大切にしていることを教えてください。
相手の話をよく聞き、対話の中で心を掴むことを大切しています。
コンサルタントが一方的に話を進めていくだけだと、根本的な課題解決はできないですし、良い関係を構築することはできません。そのため、「相手が本当にやりたいことは何か」「なぜやりたいのか」を一緒に寄り添って考えることを意識しています。
テレワークが進んでいますが、リモート会議などで意識していることはありますか?
対面で働く際と同様で、「相手の話をよく聞く」ことです。
気づかないうちに、相手の話を聞くことができなくなることが多いのではないかと思います。自分が提案したいことではなく、まずは相手の話を聞いて雑談をしつつ、自分たちの話をもっていくことで、信頼関係を築くことができると考えています。
今後も拡大する見込み
今後もコンサル業界は拡大していくと考えますか?
社会の変化やDX推進とともに、今後も拡大していくと考えています。
先述した通り、変化する社会に追いついていくためには、スピード感をもって新たな取り組みを行うことが求められます。
例えば、企業が内部で使用する基幹システムの交換スピードが、速くなっていると感じます。以前は、10年から20年単位の交換でしたが、現在は7年から8年単位になっているところが多いです。
また、未だDXを推進できていない企業は多く、全ての企業が2025年時点でDXの導入を達成することは難しいのが現状です。そのため、今後も主にDX推進を目的としたコンサルティングの依頼が増加すると考えます。
企業側にDXの知識がない場合や、DXに対する認識がずれている場合は、どのようにアシストしますか?
そのようなケースは多いですし、DXの推進には難しさもあります。
企業がIT化とDXを間違えて捉えている場合には、いきなり違いを指摘したりするのではなく、担当する案件を通して本来のあるべき姿を伝えていき、徐々にクライアントの意識を変えていけるようなアプローチをとっていきます。
今後、拡大するコンサルティング業界で求められる能力を教えてください。
求められる能力は、主に2つあります。
1点目は、1つの領域に特化する専門性です。
現代では、様々な領域のコンサルティングファームの数が増えており、ファームの数が増えると、ITや戦略といったコンサルティング領域の棲み分けが難しくなります。そこで、「なぜその人にコンサルティングを頼みたいのか」を見出すための専門的なスキルが必要になってくると思います。
2点目は、様々な専門性を持った人々を束ねるマネジメントスキルだと思います。
専門性を持った人たちだからこそ、こだわりが強くなるため、必ずしも向く方向性は一様ではない場面が出てきてしまうと思います。そのため、チームとしての良いアウトプットを出すためのマネジメントスキルが必要であると考えます。
高い専門性を持っていない方へのアドバイスはありますか?
もちろん、大学時代の専門性や前職での経験が役立つこともあると思いますが、基本的にはそうした知識による影響はそこまで大きくありません。
実際は、コミュニケーション能力や物事を整理する力の方が大切なので、専門性に関しては様々なプロジェクトでの経験を通して形成していけば問題ないと思います。
コミュニケーション能力や物事を整理する力を身につけるためにすべきことは何でしょうか?
様々なことに興味を持ち、考えることだと思います。
広く浅くでも良いので様々なことに興味を持ち、その中で見つけた好きなことを突き詰めてみてほしいと思います。
どのような人がコンサルタントに向いていると思いますか?
「困っているがいたら助けてあげたい」と思う人が向いていると思います。
コンサルタントは、クライアントの求める目的達成や課題解決のために支援することが仕事です。そのため、自分のやりたいことをやるのではなく、人のために動くことが苦にならない人が向いているのではないでしょうか。
また、好奇心旺盛な人も向いていると思います。
コンサルタントは、プロジェクトによって関わる領域も変わってきます。そのため、新しい話題や情報を積極的に取りに行き、その過程も楽しめるような人が向いていると感じますね。
好奇心が旺盛で成長意欲の高い方は、ぜひZEINへ
ZEIN JOURNALをご覧の皆さまへ。
好奇心旺盛で若いうちから様々な経験を積みたい、成長したいという人にはぜひ目指してほしいです。
特に若手のうちは失敗が糧になるので、失敗を恐れず、前に進んでほしいと思います。
<執筆/撮影:白濵 恭太朗>
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