SaaSとは
SaaSとは「Software as a Service」の略称で、インターネット上(クラウド上)のアプリケーションをユーザーが利用できるサービスのことを指します。
従来、企業が使うアプリケーションは自社でサーバーを準備し、一からプログラムを組んでアプリケーションを構築し、SAPやOracleを代表とするパッケージソフトウェアを導入することが一般的でした。しかしこれには、構築に莫大なコストがかかるという問題がありました。
一方でSaaSでは、インターネット上に何も準備せず利用できるアプリケーションが提供されるため、アプリケーションの構築が不要になります。そのため、導入コストが安い点や、アプリケーション、サーバーを企業で保持していないため保守・運用のコストもかからない点、また誰でも簡単に利用でき、利用した分だけの料金を支払えば良いというメリットがあります。GmailやZoomなどもSaaSに含まれ、実際に利用しているという方も多いのではないでしょうか。
これらのサービスは、近年インターネット上で利用できるようになりましたが、「インターネット上にソフトウェアを作ろう」という概念(当時はSaaSではなく、ASPという考え方)は、インターネットの環境が整備され始めた1990年代にすでに生まれていました。しかし、① インターネットの回線速度が遅く、社外での利用に耐えられなかったこと、② アプリケーションをそのままインターネット上に移植したため、カスタマイズ性が非常に悪かったこと、③ 企業ごとにサーバー(アプリケーション)を用意するため、莫大なコストが掛かったこと、④ インターネット上にデータを保存することによるセキュリティに対する不安が大きかったことを理由に、あまり普及しませんでした。
SaaSがトレンド化した背景
2010年以降SaaSが注目されるようになった理由は、技術進化により、ASPが利用されなかった原因を全て払拭できるようになったためです。実際に市場規模推移を見てみると、日本のSaaS市場は年平均成長率約12%の勢いで急成長しており、2023年には約8,200億円へ拡大すると予想されています。また、近年のSaaSの市場規模が大きくなっている理由として、「生産性」「リモートワーク」「テクノロジーの進化」の3つ観点から説明します。
① 生産性
労働人口が減少している日本では、労働者1人あたりのアウトプットを向上させるために、生産性向上へのニーズが高まっています。特に紙文化であったバックオフィス業務の改善は急務であり、バックオフィス業務に特化したSaaSにおいては非常に高い注目が集まっています。
② リモートワーク
働き方改革により、「場所に縛られずに自由にアクセス可能」という特徴を持つSaaSへの需要が高まっています。また、コロナウイルスの影響でリモートワークが推奨されるようになったことで、需要がさらに拡大すると推測されています。
③ テクノロジーの進化
従来のSaaSは、他社のシステム間のデータ連携ができないという課題がありました。例えば、営業や経理に関わる2つの業務において2つの企業がそれぞれのSaaSを利用していた場合、顧客データや売上データを連携させたい場合に、人が手作業で行うことがあり不便でした。しかし、テクノロジーの進化により、API※を用いて簡単に外部システムとの連携ができるようになったことで、従来の余計な作業や管理が不要になり、SaaSだけで完結できるようになりました。
※API(Application Programming Interface): ソフトウェア同士が互いに情報をやり取りするのに使用するインタフェースの仕様

SaaSを利用するメリット
① 会社にとって必要な機能を、必要なだけ利用できる
会社にとって現時点で必要なサービス(SaaS)だけを選択し、会社が保有するソフトウェアは最小限にすることが可能になります。コストを抑え最新のテクノロジーが搭載されたサービスを取捨選択して利用するのが現在の考え方です。

② システム障害のリスクを抑えられる
従来のシステムで障害が起きた状況を想定した場合、自社のサーバー内に構築しているアプリケーションを使っていると、システムの複雑性から障害要因の特定に時間がかかり、復旧に多くの時間やコストがかかってしまいます。また、システムの構成要素が密接に結合しているため、全てが同時に落ちてしまうというリスクもあります。
しかし、SaaSを利用している場合、障害が起きたサービスはすぐにわかるため、早急に原因の特定および復旧が可能です。また、障害を起こしたサービス(SaaS)が他社のサービス(SaaS)に影響を与えることもないため、安全性が高いです。

③ 新技術の採用が容易になる
人事システムでの評価機能にAI技術を導入したい状況を想定した場合、従来のシステムでは、新機能を追加しようとする場合、影響調査、追加改修設計、アプリケーションの改修、テスト、評価検証といった作業をユーザー自身(またはベンダ)で行わなければなりません。コストや期間を考慮すると新機能を気軽に導入することは難しく、最終的にシステム全体を作り替えるケースもあります。
しかし、SaaSであれば、数多くあるSaaSの中から利用したいサービスを選択し、乗り換えるだけで良いので、非常に簡単です。

ZEINにおけるSaaS関連のプロジェクト
事例1: 大手エネルギー会社における事業統合および「SAP for HANA」への移行
事業統合という難しい内容でありながら、かつ2の会社が別々に保有するシステムを「SAP※ for HANA」へ集約させ移行するという、非常に難易度の高い大規模プロジェクトでした。
※SAP:ERPパッケージ(企業の持つ資源を統合的に管理するシステムやソフトウェア)の一つ
事例2: 大手化学メーカーにおける「Microsoft O365」のグローバル導入
コミュニケーションプラットフォームの刷新として、グローバルにある子会社を含めた基盤の統合・運用体制設計/構築を行う、グローバルプロジェクトです。
<執筆/撮影:齋藤 賢太>
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