【dArwIn後編】働き方の概念を変えるプロダクトをZEINが作った理由

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この記事で分かること

・dArwInの開発背景
・dArwInを導入するメリット
・dArwInの今後の展望

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きっかけはクライアントからの相談

dArwInはどのような背景から作られたのでしょうか?

現代のオフィスでは、実に多くの時間が本業とは無関係の事務処理の対応に費やされていますが、この事務処理というのは直接売上には貢献しづらいものです。そこで、売上を上げていくような人たちには、売上に直結する仕事にフォーカスさせてあげたいというのがdArwInの作られた大枠の背景です。

きっかけについて詳しく教えてください。

クライアントから、「フロントオフィス業務※1を効率化させたいが、どうすれば良いか?」というような相談を受けたのがきっかけです。そのクライアントは、RPAは導入済みでバックオフィス業務※2の効率化をどんどん進めておましたが、売上に直結するフロントオフィス業務の効率化が思うように進んでいませんでした。また、フロントオフィス業務の効率化を進めるために、リモートデスクトップやスマホアプリを導入したが有効活用されておらず、いまだにアナログで処理している従業員もいるという状況でした。

※1フロントオフィス業務: 直接顧客と接触を持つ、社外向けの業務
※2バックオフィス業務: 顧客とはやり取りをしない、社内向けの業務

どのような要因によって、そのような状況に陥っていたのでしょうか?

要因は大きく2つありました。
まず、インターセプト業務につまずいていたという点です。インターセプト業務とは、 問い合わせや頼みごと、調査といった「想定できない突発的な業務」や、営業情報の確認や見積書をはじめとする書類作成、システム操作といった「仕事のための仕事」と言われるような簡易な業務のことを指します。このクライアントの場合、このような重要ではない仕事に業務時間の40%を割いていたのです。前述した作業はどれも基本的、かつ定型的なものですが、作業の発生頻度が異なり、いつ発生するか予測できない点や、状況によって作業内容やその条件が異なるという点で特徴があります。つまり、「人」が介在する作業であるためにシステム化が難しく、大量業務の処理や固定条件、定期的に起動するRPAでは、業務の自動化が難しいことが分かりました。

次に、クライアントが自社内に導入したスマホアプリやリモートデスクトップの利用が、現場に浸透していなかったという点です。浸透が進んでいなかった理由としては、業務で利用するアプリ数が多いうえスマホ操作がわかりづらいことや、業務連絡にはExcelなどのファイル操作が必要なケースが多く、スマホアプリは機能が不十分であること、またリモートデスクトップの作業場所の確保や作業の緊急性を考慮すると、メールや電話の利用に偏ってしまうことなどがありました。
これらの要因から逆説的に考え、以下のような想定で作られたのが「dArwIn」なのです。

※リモートデスクトップ: 手元のコンピュータからネットワークで接続された他のコンピューターのGUIやデスクトップ環境を操作する技術のこと

デジタルシフト分析が可能に

dArwInについて詳しく教えてください。

dArwInは、従来の業務をよりシンプルなプロセスで実現させたいという想いのもと生まれた、ロボットとの会話で業務を完結する「人とシステムの障壁をなくすためのインターフェース」です。「無駄な作業を行う必要のない世界」=「働き方の概念を変える」を目指し、ヒトが新しい働き方に進化するという意味を込め、ダーウィンの進化論からあやかって名付けられました。具体的には、下記のような仕組みを想定しています。

「状況に応じて、条件が変わっても定型作業が対応できるような仕組み」
「複数のシステムやファイル操作を伴う業務であったとしても、一連の作業を自動化できる仕組み」
「誰もが使えるように、システム操作がシンプルであること」
「場所や時間に制限されず、即時性の伴う業務に対応できること」

dArwInを導入することにより、企業側にはどんなメリットがあるのでしょうか。

無駄な作業から解放され、生産性の高い仕事にフォーカスできることにより売上を上げることができる点と、デジタルシフトにおける効果分析が可能になるという点です。1点目は先ほどお話ししたので、ここからは2点目について詳しく説明したいと思います。

バズワードにもなったDX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタル変革ですが、デジタルシフトも大体の意味は同じです。本質的には、ITの進化によりビジネスを再構築することで、新たな価値を見出し企業の競争力を強化することにあります。企業はデジタルシフトを進めるため、各種システムやサービスを導入していますが、具体的にどれだけ生産性があがったのかを数値化して出すことは難しい現状がありました。RPAのように利用回数などをモニタリングし、効果分析を行うことが可能なツールもありますが、スマホアプリやリモートデスクトップのような場合、実際にどれだけ利用され、どれだけの効果(工数削減、コスト削減、売上効果)をもたらしたのかを算出するのは非常に難しいのです。



しかし、dArwIn経由で実施された業務は全て、データとしてdArwInに集計されます。dArwIn経由で行った業務がどれだけあるのか、個々の利用状況はどのようになっているのかを数値化し、個人単位でのコストや工数の効果を可視化することができようになります。また、利用回数や想定効果によって算出された「個々に与えられた生産時間」から、その時間を使ってどれだけ売上が上がったのかを算出することで、生産率を図ることも可能です。実は、この売上を絡めた生産性を図ることが、最も難題でした。

Collective Intelligenceで共創の時代へ

dArwInの今後の展望について教えてください。

今までは『ヒト×AI×RPA』というのがdArwInのコンセプトでしたが、それを『クラウド×ヒト×AI×RPA×CI』に変化させたいという思いがあります。

まず「クラウド」についてですが、dArwInをSaaSとして提供したいと考えています。現在のdArwInは、企業ごとに開発・導入するため、価格がどうしても高くなってしまうという懸念があります。また、現段階ではクライアントがサービスを自由にカスタマイズすることができません。しかし、dArwInをクラウド化すれば、より安価なサービスの提供と、クライアントによるサービスのカスタマイズの自由化が可能になります。

次に「CI」についてですが、前述したクラウド化と関連しています。SaaSの特徴の1つに、クラウドを通じたサービス提供により、サービス提供者側に大量のデータが集積する点があります。「CI」はCollective Intelligence(集団的知性)の略称で、1社だけでは叶えられない自社の枠を超えた業務分析が、SaaSによるデータ集積・解析によって会社の垣根を超えたベストプラクティスの分析が可能になる」というような考え方です。dArwInを利用していただいている企業のあらゆる業務発生源を抑えることで、各業界固有の潜在的に自動化可能な業務の発見や、その効果を分析することが可能になります。集めたデータを各社それぞれに展開することで、より効率的な提案をお客様にすることができるようになります。先ほど伝えた「デジタルシフト」を1社で行うのではなく、コミュニティ内に集まったデータ・分析結果を複数社で利用できる仕組みが構築できるのです。

以上から、最終的には「CI」という概念のもとに集積されたユーザーデータや業務効果を共創し、1社では作り上げることのできない新しい働き方の実現を目指しています。

コンサルティング会社だからこそ作れたプロダクト

コンサルティングファームがあえて作る意味はあるのでしょうか?

コンサルタントはというのは公正なもので、特定のプロダクトだけを勧めることはありません。そのため、お客様にとっての「最適解」を踏まえたサービスを提供できるという点で作る意味があると思います。

システム販売を行うソフトウェア会社は、自社システムを売るためのサービスを開発しています。その目的は、既存システムよりも「売れる」製品を開発し、企業で使われるすべての製品が自社製品になるように、自社システムでカバーできる業務範囲を広げることにあります。そのため、どんなに質の良い製品であっても、他社製品と連携できるような仕組みはありません。このように、自社製品のみが選択される仕組みは「ベンダーロック」と呼ばれます。

ベンダーロックの利点は、全製品が1社で統一されることで、システム間の互換性が高まり効率的な導入・運用ができる点です。システムをバージョンアップした際も、互換性を心配することなく使えるところが大きなメリットです。しかし、最新の技術を使った他社システムを導入したいと思った際には、ベンダーロックが障壁になり、ビジネス変革のスピードを阻害してしまう恐れがあります。

このような観点を踏まえると、ZEINはソフトウェア会社ではなくコンサルティングファームであることから、ベンダーロックするような仕組みではなく、クライアントが利用したいシステムに連携できるような仕組み、すなわち「dArwIn」を提供できるのです。私たちは、ソフトウェアではなく、クライアントの課題や業務改善に役立つデータ収集や分析に、CIを実現する意味があると考えています。

ZEIN JOURNALをご覧の皆さまへ。

これからはデジタルネイティブ世代が考えた「働き方」や「ビジネス」が最大の変革ポイントになると思います。弊社は「従来の働き方を変えていく」ことを掲げていますが、ジネスの根本にはまだ旧態依然のマインドが残っているため、デジタルシフトの波を最大限利用しても、緩やかな変化しか起こせないと思います。そのため、デジタルネイティブ世代の方々には、従来の良いところは残しつつも、従来の常識を覆す発想豊かな考え方を期待しています。

<執筆:齋藤 賢太>
※本記事掲載の情報は、公開時点のものです。