インタビュイー紹介
川端 泰佑(かわばた たいすけ)
ZEIN株式会社 取締役/Managing Director 1980年10月3日生まれ。新卒でIT企業に入社後、ITベンチャー執行役員、外資コンサルティングファームディレクターを経て、ZEINに参画。趣味はキャンプ、筋トレ、子供・愛犬と遊ぶこと。
コンサルタントに求められる、5つの能力・5つのアクション
コンサルタントに求められる能力を教えてください。
主に5つあります。
1つ目は、ビジネスに対する理解力、及び分析力です。コンサルタントは、クライアントのビジネスニーズに基づいた最適なソリューションの提案を主に行っているため、まずはビジネスへの理解力が求められます。ただ、クライアントのビジネスの状況を理解するだけではソリューションの提案に至らないため、さらに顕在課題だけでなく潜在課題を抽出する分析力が求められます。
2つ目は、問題解決力です。ビジネスの分析を行った上で、抽出された課題に対し、適切な解決策を提案する力が求められます。
クライアントのビジネス戦略に沿っているだけでなく、実行可能性やリスクを考慮した上で解決までの道筋を立てた計画を策定し、実行する能力が必要になります。
3つ目は、コミュニケーション能力です。プロジェクトでは、クライアント企業の経営層や従業員だけでなく、外部ベンダーやメンバーとコミュニケーションを取る機会が多く、適切なタイミングで的確なアドバイスを提供することが求められます。またクライアント企業の要望や意見を正確に理解し、要件を簡潔(分かりやすく)に伝えることも非常に重要です。
4つ目は、プロジェクトマネジメント能力です。コンサルタントはプロジェクト単位で業務を行うため、進捗管理やチームマネジメントなど、様々なことに対して適切にコントロールする必要があります。また、コンサルタントが推進するプロジェクトは難易度が非常に高い上に、複数のプロジェクトを同時に進めることも多く、効率的かつ正確にタスクを割り当て、チームの協力を促し、プロジェクトを推進する高度なマネジメント能力が求められます。
5つ目は、ドキュメンテーション(プレゼンテーション)能力です。提案書や報告書、成果物資料の作成能力や、それを効果的に伝えるドキュメンテーション能力が求められます。クライアントの経営層やステークホルダーだけでなく、メンバーに対しても論理的かつ分かりやすくアイデアを伝える能力が必要ですので、対象者を明確にした上で、資料作成・プレゼンテーションを行う能力が求められます。
学生にとって、上記の能力を身につけるのはなかなか難しいように感じたのですが、新卒コンサルタントにはどのようなことを求めていますか?
先ほど挙げた5つの能力を入社前に身につけることは、非常に難しいかと思います。そのため、新卒コンサルタントには必要な能力を身につけるために、5つのアクションを取ることを求めています。
1つ目は、自分の考えを説明し、行動することです。社内外問わず、多くの人とコミュニケーションを取る際には、一人称で説明することが重要です。得た情報をそのまま伝えるだけでは、信頼関係を築くことができません。自分で考えて、行動するということを実践して初めて信頼関係を築くことが可能になり、同時に自己成長の機会を獲得することにも繋がります。
2つ目は、主体的に学ぶことです。コンサルタントは日頃の業務で様々な知識を得ることができますが、一人前のコンサルタントになるには、さらに知識を知恵に変えていく必要があります。知恵とは、得た知識をもとに実践を重ねることで生まれるものです。最新の情報をキャッチアップし、プロジェクトの中でアウトプットを行い、知識を知恵に変えていくという努力をすることで飛躍的な成長が期待できます。そのためにも、学生時代も当たり前のように行っていた復習・予習を、社会人になってからも継続して行うことが大切です。
3つ目は、チームプレイヤーになることです。コンサルタントは1つのプロジェクトに複数人がアサインされます。そのため、プロジェクトを成功に導くためには、個人の力だけでなく、チームで協力して業務を行うことが重要になってきます。自分の担当領域だけでなく、幅広い視野を持ち、チームメンバーに対しても関心を持つことで、質の高いアウトプットを出すことが可能になります。
4つ目は、相手に敬意を払うことです。コンサルタントは常に最新の情報をキャッチアップする必要がありますが、自分ひとりでの勉強では得られる情報に限りがあるため、周囲の人から知識を得ることがよくあります。そのため、周囲の人に対して敬意を持ち、素直にアドバイスを受け入れることで自身を成長させることが重要です。また副次的効果として、チームメンバー間での信頼関係の構築が期待できます。相手から敬意を持ってもらうことや感謝の言葉をもらうことで、気持ちよく働くことが可能になります。
5つ目は、仕事を楽しむことです。なんとなく仕事をするのではなく、楽しみながら熱意を持って取り組むことで、より成長できます。これが最も大事なことです。経験を積むことに対して、楽しさを感じることができれば、自信を持つことにも繋がります。
学生時代から実践できるトレーニング方法
新卒採用の面接を担当される際は、学生のどのような部分を評価していますか?
どのような成果を出したかということよりも、応募者がこれまでに経験してきたことや考えていることに関して、いかに自分の言葉で説明できているかということを評価しています。先ほどお伝えした内容にもあったように、自分の言葉で説明して初めて信頼は得られますし、一人称で説明できていると話が分かりやすいですね。
面接でよく聞かれるガクチカでは、考えて行動したことを自分の言葉で説明できていれば、成果を残すことができていなくても問題ないでしょうか?
全力でやり切った結果失敗に終わってしまった、ということであれば全く問題ありません。失敗した原因を理解し、次回同じ挑戦をした際には成功できると自信を持っているのであれば、評価としてはプラスです。失敗から学び、改善する姿勢を持つことが非常に大切ですね。
入社に向けて、学生時代から準備できることがあれば教えてください。
瞬発的思考能力を鍛えるトレーニングをオススメします。瞬発的思考能力とは、迅速かつ的確に解決策を導き出せる思考力のことですが、お笑い芸人が即座にツッコミを入れることで笑いを作る能力、というのが分かりやすい例かと思います。コンサルタントは問題解決力を鍛えるために、分析フレームワークを学ぶ人は多いかと思うのですが、これはあくまで整理方法を学んだだけであり、思考能力の向上にはダイレクトには繋がっていません。実際に「仕事ができる人」というのは、何を聞いても的確な回答をできる人や、難しい問題に直面しても次々に整理して解決していく人のことを思い浮かべるのではないでしょうか。
では、どう鍛えればいいのか?ということに関してですが、鍛え方は単純で、なぜそう思ったか?を即座に繰り返すというものです。たとえば、「宇宙人にどのようなイメージを持っているか?」→「タコのような形や、グレーの色をしている」→「では、なぜそのようなイメージを持ったのか?」というように自分自身に疑問を投げかけ、瞬時に回答し、さらにその理由を説明するというサイクルを短時間で繰り返してみてください。とにかく疑問に対して、自分の持っている知識で論理づけて回答することがポイントです。
このトレーニングでは、自分の知識をフル活用して回答を作り出すという作業を繰り返すため、難しい問いに対してもシンプルな回答を即座に作れるようになります。より実践的な方法で身に着けるなら、話ながら答えをつくり上げるのがオススメですね。
そうすることで、クライアントとコミュニケーションを取っている際に、どのような質問をされてもうろたえることなく話すことができるようになります。
では「論理的思考力を鍛えたい」という場合は、どのようなトレーニングをすべきですか?
論理的思考能力と聞くと難しく考えてしまいがちですが、単純にいうと「誰にでも分かる説明ができること」です。では、分かりやすい説明ができるようになるためにはどうすれば良いかというと、例えば、アルバイトの業務内容や大学で学んでいることを、その内容を全く知らない人(例えば祖父母や5歳児など)に伝えるという状況を考えてみてください。難しい表現を一切使わずに、いかにシンプルな言葉で説明できるか?ということを繰り返し実践すれば、論理的思考力を鍛えることができます。
入社後は自己研鑽の時間を確保する必要があると思いますが、どのようなことを勉強すべきでしょうか?
まずは、プロジェクトのアサイン先の業界やクライアントビジネスに関して勉強することをお勧めします。クライアントの業界は過去どのような経緯で発展してきたのか、現在の業界が抱える課題はなにか、今後のビジネスの流れは、など過去・現在・未来の3つの軸を中心に調べます。加えて、クライアントのIR情報などを調査し、クライアントのビジネス戦略や課題などを事前に把握することで、クライアント理解を深めます。また、可能なら業界本を買い、基本的な業務プロセスまで抑えることで、ビジネス理解を深めることも大事です。
<執筆/撮影:白濵 恭太朗>
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