「このプロジェクトにアサインされる前は、1ヶ月くらいアベっていました」
「君に頼んだA市場のリサーチの件なんだけど、なにかアウトプット出たかな?」
「B社と技術提携することで大きなシナジー効果を得ることができた」
みなさんは、これらの意味がわかりますか?
例文のように、難解なコンサル業界独特の用語や言いまわしがたくさん存在します。そこで、コンサル業界でつかわれている用語を、基礎編、思考編、アルファベット編に分けて、基礎から高度な内容まで15個の用語を説明します。
この用語を知っておくと、コンサルタントとして働く第一歩をいち早く踏み出すことがはずです。
ぜひ最後までご覧ください!
基礎編
まず基礎編では、コンサル業界でよく使われる基本的な用語5つをご紹介します。
1. アサイン
2. アベる
3. アウトプット
4. コミット
5. シナジー
1. アサイン
コンサル業界において、コンサルタントが担当プロジェクトを割り振られることを「アサイン」と呼びます。英語では「割り当て」という意味ですが、コンサル業界においては「配属する」という意味で使用されることが多いです。業界によっては、「参画する」「確保する」などの使われ方もする曖昧な意味の言葉です。
面接の中でも使用される頻度の高い専門用語であるため、コンサルティングファームへ応募する際には必ず押さえておきたい用語です。また、「アサイン」の反対の意味の用語は、「リリース」です。プロジェクトから抜けることをいいます。
2. アベる
Availableの略で、英語では「在庫がある」「利用できる」という意味ですが、コンサル業界においては、次のプロジェクトにアサインされることを待っている状態を指します。通常アベっている間は、社内向けの仕事や自己学習などをして過ごすことが多いです。
3. アウトプット
コンサル業界において、自身が作成する資料などの成果物のことを指します。具体的には、リサーチ結果や仕入れた情報・知識などを基に作成されたものを指します。その時々により、分析レポートであったり、マネジメントへの報告資料であったり、プログラムであったりします。
「コンサルタントはアウトプットが全てだから」とよく言われます。アウトプットのみでコンサルタントとしての資質が判断されるといっても過言ではありません。
4. コミット
「約束」「責任」「関わる」という意味です。コンサル業界においては「約束する」「関わる」の2通りのニュアンスで使われることが多いです。いずれも責任をもって職務を果たすという強い意志を表す際に使用されます。
「約束」というニュアンスでは「目標・目的を必ず達成する」という約諾として、「関わる」というニュアンスでは「目標・目的に対し責任を持って作業を推進する」という決意表明として使用されます。
5. シナジー
「共同作業」といった意味があるものの、コンサル業界では「相乗効果」「共同作用」といった意味で使用されることが大半です。「シナジー効果」と言うこともあり、M&Aや、経営の多角化を行う際に、複数の異なる事業を組み合わせることで、それぞれが元々持っていた以上の価値を生み出す効果を指します。
また、1つの企業の中の別々の事業部門が、業務を共同で行うことで経営効率を高めることもシナジー効果の1つです。
戦略系ファームや会計系ファームへ応募すると、面接の中でM&Aがテーマとなることも多いです。そこでは、「M&Aは何故失敗するのか」などという質問は頻出であり、ディスカッションにおけるキーワードとして「シナジー」は外せません。シナジーとは何で、その獲得がM&Aにおいてどのような意味を持つのかしっかり把握しておく必要があると言えます。
思考編
続いて、コンサルタントとして働くには欠かせない基礎的な思考法についての用語をご紹介します。
1. ロジカルシンキング
2. 仮説思考
3. ゼロベース思考
4. クリティカルシンキング
5. ロジックツリー
1. ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは論理的思考の意味で、情報を整理し、矛盾なく筋の通った結論を導くための思考法です。
ロジカルシンキングをすることで、その筋道を辿れば誰が考えても同じ結論に至ることができ、分かりやすく、説得力のあるものにできます。クライアントの課題を適切に解決へ導くことが求められるコンサルタントにとって必要な思考法です。
2. 仮説思考
仮説思考とは、課題解決において情報収集よりも、仮説の検証→修正を繰り返し素早く最適解を導くことを重視する思考法です。
限られた情報を基に仮説を立てて検証し、結果に応じてその後修正という動作を繰り返します。 Bestなソリューションを練るのに時間をかけるのではなく、Betterなソリューションをいち早く実行に移して、仮説の検証→修正を繰り返していくことで、効率的かつ迅速に問題の解決または解決策の提示を図ります。
仮説思考は経営戦略の策定や経営判断にもしばしば用いられ、意思決定の速度を向上できるというメリットがあります。
3. ゼロベース思考
ゼロベース思考とは、過去の成功体験や経験、しがらみに囚われることなく、すべてを白紙の状態で一から思考することです。経営環境の変化が激しい現在は、従来の過去から現在への推移の延長上から未来を推論する「トレンド思考」では通用しないこともあります。先入観を一切捨て、「そもそも本来あるべき姿」や「一番望ましい姿」についてゼロから方向性を模索しようというのがゼロベース思考です。柔軟に物事を考えることができ、革新的でクリティカルなアイデアが出やすくなります。
4. クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは、批判的思考という意味で、ある事象や情報を鵜呑みにするのではなく、懐疑的な態度で臨み、客観視して考察することによって最適解を導こうとする思考法です。
事象や物事の前提条件・要素・論理などをクリティカルシンキングで見直し考え抜くことで、より良い結論を導き出すことができます。ロジカルシンキングに加えてこの思考法を使うことで、状況に合わせた最適解を素早く導くことができます。
5. ロジックツリー
ロジックツリーとは、ある問題を解決するため、関連事象を樹形図に展開することでその原因や解決方法を探る手法です。問題の「枝葉」と「根」を明確にすることで、解決手段を具体化していく際にも用いられます。
ロジックツリーを展開する際には、同一階層における分類基準をすべて揃え、なおかつその上位概念をMECE(完全な全体集合)に分解することが必要となります。
例えば「飛行機」、「電車」、「船」といった階層の上位概念にあたるのは「移動手段」や「交通機関」などです。
また、「陸路」、「空路」、「海路」といった項目に分けてから各項目の下位階層に飛行機や電車を配置すべき場合もあります。問題解決のためにモレや重複が発生しないよう、こうした階層構造をしっかり網羅しておく必要があります。
アルファベット編
最後に、コンサル業界でよく使われるアルファベット用語5つです。
1. CxO
2. ERP
3. KPI / KGI
4. OJT
5. CSR
1. CxO
CxOとは、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)など、 “Chief ~ Officer”と表記される執行責任役職の総称です。
CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)、CSO(Chief Strategic Officer:最高経営戦略責任者)、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)といったように多くの役職がCxOに含まれますが、企業によって役職の種類や名称は異なります。例えばCIOは、企業によっては最高投資責任者(Chief Investment Officer)ということもあります。
2. ERP
ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、企業資源計画のことです。これは、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった企業のすべての経営資源を最大活用するため、経営資源を横断的に管理し、効率的な経営活動を行おうという手法や考え方です。
ERPが一般的に扱う品目は「製造・物流・販売・調達・人事・財務会計」に分類され、これを実現するための業務横断型ソフトウェアは「ERPパッケージ(統合業務パッケージ)」と呼ばれます。
ERPの導入によって、従来部門ごとで別々に管理していた基幹業務のデータを、全て1つのデータベースで一元管理することが可能になります。その為、業務効率の向上、財務会計や管理会計の迅速化、スピーディーな経営状態の把握、といったメリットがもたらされると言われています。
3. KPI / KGI
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標のことです。企業が経営戦略の目標を達成するため、個々の具体的な業務プロセスを監視するために設定される定量的な指標(業績評価指標)のうち主要なもののことを言います。KPIを日次、週次など定期的に集計することでプロセスの進捗度合いを効率的にモニタリングできます。
尚、KPIと対でよく使われる用語が「KGI」(Key Goal Indicator=重要目標達成指標)ですが、KGIの値は「目標をどの程度達成したか」という結果を示すのに対し、KPIは計画の進捗過程を計測する材料となります。つまり、KPIをチェックすることで、KGIを中間的に予測することが可能となります。
4. OJT
OJTとは、on-the-job trainingの略で、職場内訓練のことです。これは、新しい従業員が担当業務を行う上で必要な知識やスキルの指導を、管理監督者の責任のもと職場で実際に働きながら受けることです。また、広義には、職場内での勉強会やミーティングなどの教育・指導もOJTに含むとされます。
従来、日本のものづくりの現場においては、伝統的に組織的・個人的OJTが行われてきました。高度な技術を持つ熟練工を育てるには、長い時間をかけ、試行錯誤を繰り返しながら高度な技術を習得するOJTが最適と考えられていたからです。
しかし、雇用の流動化が進む昨今、「人材育成に時間がかかる」、「管理監督者によって教育成果にバラツキがある」といったOJTの弱点が浮き彫りになってきました。そこで、職場を離れ、研修の場と時間を設ける「OffJT(Off the Job Training=職場外研修)」とOJTとを適切に組み合わせた人材育成プログラムが重要であると考えられるようになってきています。
5. CSR
CSRとは、corporate social responsibilityの略で、企業の社会的責任のことです。企業が社会の期待や要求に応え、消費者やステークホルダーだけでなく環境や地域、国家に広く貢献しようとする姿勢を示します。
よくCSRと「コンプライアンス」が混同されますが、コンプライアンスはあくまで企業が法律や倫理・社会ルールを順守し、公正・健全を保つという概念であるのに対し、CSRは環境保護、雇用創出、消費者保護といった多くの社会のニーズに応えることによって、社会に愛され必要とされる企業を目指すという広い概念です。
尚、CSRへの取り組みは企業にとってコスト負担が増えるとの見方もありますが、従業員のモチベーション向上による技術・サービスの改革、社会からの企業イメージの向上、投資家の評価上昇などプラス面も少なくありません。
いかがだったでしょうか。コンサル業界にはこのようにたくさんの用語があります。
これらを知ることで、コンサルタントとして働くスタートをきる第一歩の一助になることを祈っております!
<執筆:斎藤 賢太>
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